Netflixで配信が開始されて以来、大きな話題を呼んでいる韓国ドラマ「暴君のシェフ」。
その斬新な設定とスリリングなストーリー展開で多くの視聴者を魅了し、世界的ヒットを記録しています。
しかしその一方で、日本の人気漫画である「信長のシェフ」と設定が酷似しているとの指摘があり、一部ではパクリ疑惑が浮上しているのも事実です。
現代の料理人が過去の時代にタイムスリップし、歴史上の人物に料理を振る舞うというストーリーは、確かに共通しています。この記事では、両作品を比較し、パクリ疑惑の真相に迫ります。
・なぜパクリ疑惑が浮上したのか、その背景とネット上の声
・リメイクや原作の有無など、制作背景から見える両作品の関係性
・作品が抱える他のトラブルや、それでもヒットした理由
「暴君のシェフ」パクリ疑惑の真相を比較
- 信長のシェフと似てる点を整理
- タイムスリップという設定は同じか
- ストーリー設定が酷似との指摘
- これはリメイク作品にあたるのか
- 原作との違いを解説
信長のシェフと似てる点を整理
「暴君のシェフ」と「信長のシェフ」にパクリ疑惑が浮上した最大の理由は、両作品の根幹をなす設定に多くの類似点が見られるためです。具体的にどのような点が似ているのか、まずは客観的な事実を整理してみましょう。
最も大きな共通点は、「現代の料理人が過去の時代へタイムスリップ(もしくは転移)し、歴史上の権力者に料理の腕前を認められて仕える」という物語です。この斬新なアイデアが共通していることが、多くの視聴者に「似ている」という印象を与えています。
以下の表で、両作品の基本的な設定を比較してみます。
比較項目 | 暴君のシェフ | 信長のシェフ |
---|---|---|
主人公 | 現代の天才フレンチシェフ(女性) | 現代のフレンチ料理人(男性) |
タイムスリップ先 | 朝鮮王朝時代 | 日本の戦国時代 |
仕える権力者 | 暴君と呼ばれる王「イ・ホン」(モデルは燕山君) | 戦国大名「織田信長」 |
物語の軸 | 料理を通じて王宮での生き残りを図り、王との関係を築く | 料理を通じて信長の天下統一を支え、歴史に関与する |
ジャンル | サバイバル・ファンタジー・ラブコメディ | 歴史・グルメ・フィクション |
このように、主人公の性別や舞台となる国・時代は異なりますが、「現代料理人が過去で歴史上の人物と関わる」という大枠は完全に一致しています。
料理が単なる食事ではなく、権力者の心を動かしたり、窮地を脱したりするための重要な鍵となる点も、両作品に共通する魅力であり、同時に類似性の指摘に繋がっていると言えるでしょう。
タイムスリップという設定は同じか
「タイムスリップ」という設定は両作品の共通点として挙げられますが、その描かれ方には微妙な違いが存在します。この違いを理解することが、作品の独自性を考える上で重要になります。
まず、「信長のシェフ」の主人公ケンは、なぜタイムスリップしたのか理由が不明なまま記憶喪失の状態で戦国時代に迷い込みます。彼は現代の知識や調理技術を駆使して信長に仕えますが、物語の根底には「自分は何者なのか」「なぜここに来たのか」というミステリー要素が流れています。
一方、「暴君のシェフ」の主人公ヨン・ジヨンは、事故をきっかけに朝鮮王朝時代へ迷い込みます。こちらは「信長のシェフ」のように記憶喪失という設定はなく、現代人としてのアイデンティティを保ったまま、突如放り込まれた過去の世界で生き残りをかけて奮闘します。
設定の微妙な違い
- 信長のシェフ:記憶喪失を伴う、謎の多いタイムスリップ。
- 暴君のシェフ:事故が原因のタイムスリップ。現代の記憶は保持している。
言ってしまえば、前者は「歴史の謎解き」もテーマの一つですが、後者は「現代知識を持つスターシェフのサバイバル劇」という側面がより強調されています。
このように、タイムスリップというSF要素は共通していても、その目的や主人公が置かれた状況設定には明確な差異があり、物語の方向性に影響を与えているのです。
ストーリー設定が酷似との指摘
「ストーリー設定が酷似している」という指摘は、SNSや各種レビューサイトで数多く見受けられます。特に、日本の漫画やドラマのファンからは、「ほぼ同じではないか」という厳しい意見も出ています。
指摘の中心は、前述の通り「現代の料理人が過去に飛び、その時代の権力者を料理で魅了する」という流れです。後発の「暴君のシェフ」が模倣したのではないか、と考える視聴者が多いのは自然なことかもしれません。
実際、ネット上では以下のような声が見られます。
しかし、一方で「設定は似ているが、全く別の作品として面白い」という肯定的な意見も少なくありません。
主人公を女性に変更し、ラブコメ要素や宮廷内の陰謀を色濃く描くことで、「暴君のシェフ」は独自の魅力を確立しているとの評価もあります。
酷似しているという指摘は、あくまで物語の導入部分や大枠に関するものであり、細かなストーリー展開やキャラクター造形は異なると言えそうです。
これはリメイク作品にあたるのか
設定が似ていることから、「「暴君のシェフ」は「信長のシェフ」の公式なリメイク作品なのでは?」と考える人もいるかもしれません。しかし、現在のところ、そのように公式に発表された事実は一切ありません。
通常、海外の作品をリメイクする場合は、制作発表の段階で原作権の取得やリメイク企画であることが公表されます。例えば、日本で大ヒットしたドラマ「梨泰院クラス」が「六本木クラス」としてリメイクされた際は、正式なライセンス契約のもとで制作されました。
リメイクではない
「暴君のシェフ」は、制作会社であるtvNや配信元であるNetflixから、「信長のシェフ」のリメイクであるという公式なアナウンスは出ていません。そのため、本作はあくまでオリジナル脚本の作品として位置づけられています。
公式なリメイクではない以上、「設定を拝借したのではないか」という疑惑、つまり「パクリ」という批判に繋がりやすくなっているのが現状です。
もしこれが正式なリメイクであれば、ファンも納得の上で両作品の違いを楽しむことができたでしょう。しかし、そうではないために、設定の類似性がより際立って議論の的となっているのです。
原作との違いを解説
両作品を比較する上で、最も決定的かつ重要な違いは「原作の有無」です。
「信長のシェフ」は、「原作:西村ミツル氏、作画:梶川卓郎氏」による漫画が明確に存在します。2011年から連載が開始され、長年にわたって多くのファンに支持されてきた人気作品であり、ドラマ化もこの原作に基づいて制作されました。物語の骨格やキャラクター設定は、すべてこの原作から生まれています。
「信長のシェフ」の原作情報
週刊漫画TIMESにて連載されていた歴史グルメ漫画。単行本は30巻以上刊行されており、累計発行部数も非常に多い人気シリーズです。
一方で、「暴君のシェフ」は日本の漫画を原作としているわけではなく、韓国のウェブ小説「燕山君のシェフとして生き残る(연산군의 셰프로 살아남기)」が原作です。この点は、「信長のシェフ」が長年連載されている著名な漫画を原作としているのとは少し異なります。
「暴君のシェフ」の原作では、タイトルにもある通り、実在した朝鮮王朝の暴君・燕山君をモデルにした王が登場します。このため、本作は完全なオリジナル脚本というわけではなく、ウェブ小説という原作に基づいて物語が構築されているのです。
この「原作の違い」は、パクリ疑惑を考える上で非常に大きなポイントです。「信長のシェフ」という日本で広く知られた漫画を原作とする作品がある中で、「暴君のシェフ」が同じく料理人がタイムスリップするという設定のウェブ小説を原作としている点が、議論を複雑にしています。
両作品ともに原作が存在するため、ドラマ制作陣が独自に設定を模倣したというよりは、似たテーマを持つ原作がそれぞれ存在したと考えることができます。
いずれにしても、両者の創作の出発点が、日本の漫画と韓国のウェブ小説という異なるメディアであることは、議論の前提として理解しておくべきでしょう。
「暴君のシェフ」パクリ以外の評価と反応
- 疑惑に関するネットの声を紹介
- 相次ぐトラブルも話題に
- 制作サイドはコメントなしを継続
- 一方で世界的ヒットを記録
疑惑に関するネットの声を紹介
「暴君のシェフ」に関するパクリ疑惑について、インターネット上では様々な意見が交わされています。一概に批判的な声ばかりではなく、作品を擁護する意見や、問題を切り離して楽しんでいるファンの声も多く見られます。
否定的な意見
やはり最も多いのは、「設定が酷似している」という批判的な意見です。
- 「信長のシェフのファンとしては、ここまで似ていると複雑。オマージュと言うには少し無理があるのでは?」
- 「アイデアをそのまま使っているようにしか見えない。制作陣はコメントすべき。」
- 「面白い面白くない以前に、クリエイターとしての倫理観を問われる問題だと思う。」
肯定的な意見
一方で、設定の類似性を認めつつも、別作品として楽しんでいる視聴者もいます。
- 「最初はパクリかと思ったけど、見てみたら全然違う面白さがあった。ラブコメ要素が強くてこれはこれで好き。」
- 「創作の世界ではアイデアが被ることはある。面白ければそれでいい。」
- 「日韓で舞台も違うし、料理も違う。別物として楽しめばいいのに。」
このように、評価は真っ二つに分かれているのが現状です。「アイデアの盗用」と捉えるか、「よくある設定の一つ」と捉えるかで、視聴者の感想も大きく異なっているようです。
相次ぐトラブルも話題に
「暴君のシェフ」は、パクリ疑惑だけでなく、制作過程でいくつかのトラブルに見舞われたことでも知られています。これらの問題が、作品への注目度をある意味で高める結果となりました。
主演俳優の交代劇
当初、暴君イ・ホン役には別の俳優パク・ソンフンがキャスティングされていました。しかし、彼が過去にSNSへ不適切な画像を投稿したことが問題視され、撮影開始前に降板。
急遽、現在のイ・チェミンが代役を務めることになりました。この交代劇は、制作初期の波乱として大きく報じられました。
セットの誤字問題
第1話の放送では、王と主人公が対面する重要なシーンのセットに誤字があることが発覚。「太平聖代」と書くべきところを「太平聖大」と誤記しており、視聴者から指摘が殺到。制作陣は後に謝罪し、映像を修正する事態となりました。
声優による出演者への批判騒動
さらに、作中の中国語セリフの吹き替えを担当した中国人声優が、SNSで特定の韓国人俳優の発音を酷評し、嘲笑したとも受け取れる投稿をしたことで炎上。この騒動は国際的なニュースにもなり、作品のイメージに影響を与えました。
これらのトラブルは、作品の内容とは直接関係ありませんが、「いわくつきのドラマ」という印象を与え、パクリ疑惑と合わせて話題が尽きない状況を生み出しています。
制作サイドはコメントなしを継続
これだけ多くの疑惑や指摘がなされているにもかかわらず、「暴君のシェフ」の制作サイド(韓国のテレビ局tvNや脚本家など)は、現在に至るまでパクリ疑惑に関して一切の公式コメントを出していません。
この「沈黙」が、さらなる憶測を呼んでいます。コメントを出さない理由として、以下のような可能性が考えられます。
コメントしない理由の推測
- 意図的な無視:騒動を大きくしないため、あえて言及しない戦略。
- 問題視していない:法的に著作権を侵害しているわけではなく、創作の範囲内だと考えている。
- 反論が難しい:設定の類似性は事実であるため、有効な反論ができない。
いずれにしても、制作サイドが公式見解を示さない限り、視聴者やメディアは憶測で語るしかありません。この対応が、疑惑をいつまでも燻らせる最大の要因となっていることは間違いないでしょう。
ファンからは誠実な対応を求める声も上がっていますが、今後何らかの声明が出される可能性は低いと見られています。
一方で世界的ヒットを記録
様々な疑惑やトラブルを抱えながらも、「暴君のシェフ」は商業的に大きな成功を収めています。Netflixで配信されると、韓国国内だけでなく、日本を含むアジア各国、さらには欧米でも視聴ランキングの上位にランクインしました。
報道によると、NetflixのグローバルTVショー(非英語)部門で2位を記録し、累計で40以上の国と地域で1位を獲得するなど、まさに世界的ヒットと呼べる成果を上げています。
この成功の背景には、以下のような要因が挙げられます。
- 主演俳優の魅力:少女時代のユナをはじめとする人気キャストが出演していること。
- 韓国ドラマのブランド力:近年のクオリティの高い韓国ドラマへの信頼感。
- 中毒性の高いストーリー:ラブコメとサスペンス、グルメ要素が巧みに融合された展開。
- Netflixの配信網:世界中の視聴者に一斉に届けられるプラットフォームの強み。
つまり、パクリ疑惑や制作トラブルといったネガティブな話題をものともしないほど、ドラマ作品としての魅力や完成度が高かったということが言えます。
批判的な視点を持つ視聴者がいる一方で、純粋なエンターテイメントとして作品を楽しみ、支持した視聴者が世界中に大勢いた、というのがこのヒットが示す事実です。
結論:「暴君のシェフ」パクリ問題の要点
- 『暴君のシェフ』はNetflixで配信中の人気韓国ドラマ
- 日本の漫画『信長のシェフ』と設定が酷似しているとの指摘がある
- 主な共通点は「現代の料理人が過去へ行き権力者に仕える」という大枠
- 『暴君のシェフ』は公式なリメイク作品ではない
- 『信長のシェフ』には漫画原作があるが、『暴君のシェフ』はオリジナル脚本
- タイムスリップの設定には記憶喪失の有無など微妙な違いが見られる
- ネット上ではパクリだとする批判と、別物として楽しむ肯定的な意見に分かれている
- 制作サイドはパクリ疑惑について公式コメントを出していない
- 主演俳優の交代やセットの誤字など、他のトラブルも複数発生した
- それでも作品はNetflixで世界的なヒットを記録している
- 成功の裏にはキャストの魅力や中毒性のあるストーリーがある
- 疑惑の真相は不明だが、多くの視聴者はエンタメとして作品を評価した
- 最終的な判断は視聴者一人ひとりに委ねられているのが現状
- 両作品は似て非なるものとして、それぞれの魅力を楽しむのが良いかもしれない
- この問題は創作におけるアイデアの類似性という難しいテーマを投げかけている